TALK SESSION

REPORT #07

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東京・銀座の未来

現代美術家
スプツニ子!
アントレプレナー
小川和也

第七回の銀座ソニーパークプロジェクトトークセッションは、現代美術家のスプツニ子!さんと、アントレプレナーの小川和也さんをお迎えし、「東京・銀座の未来」について語っていただきました。

今の銀座は古き良きニューヨークのよう

report_thumb1 スプツニ子!:私は新宿生まれの新宿育ちなんですが、銀座は新宿に比べてはるかに洗練された街に感じます。きれいなおねえさんたちのいるクラブで、国や企業のものすごく重要なことが決められているイメージ。

小川:八丁目あたりがまさにそういう場所ですね。僕が最初に自分たちのお金でオフィスを持ったのは銀座の一丁目。エレベーターもないすごくボロいビルだったんだけど、名刺に「銀座」と入っているだけで海外でも効果があるんですよ。銀座ブランドの強さってこういうことなのかと。

銀座は明治時代に2回、大きな火災に遭ったために、当時の最新の建築技術を使って耐火性の高い建物を建てると同時に区画整理をしたり、その後も大正時代に関東大震災でダメージを受けた上で作り直されたりと、大きな変遷がある。

今回の銀座ソニーパークプロジェクトも、銀座という街を再構成していく上での大きな変遷に連なるものになるでしょうね。

スプツニ子!:今の銀座を見て思い起こすのはニューヨークの5番街ですよね。5番街を参考にデザインしたかと思うほど、雰囲気が似ています。でもニューヨークの5番街は、ニューヨークの中でも古き良きニューヨークといった場所。もともとは線路だった場所を利用したハイラインや、ブライアントパークといった、新しいコミュニティエリアも作られています。

銀座も何度も作り直されているなら時代ごとの銀座があるわけですが、今の時代の銀座はどういうものなのかを、銀座ソニーパークプロジェクトをきっかけに改めて考えるのは面白いですよね。

小川:ニューヨークはカオスでいろんなエッセンスがミックスしてるじゃないですか。銀座はいろんな要素がこぢんまりとまとまってるのが良いところでもあり、また物足りないところでもあります。と同時に、世界中から人々が集まる場所でもある。

日本の中でというだけでなく、世界に対して銀座はどうあるべきなのか、ということを考えていく必要があると思います。スプツニ子!さんは「豊島八百万ラボ」という、ユニークな場所でユニークな試みをされていますが、場所の文脈というのもありますよね。

テクノロジーも八百万の神のひとつ

report_thumb2 スプツニ子!:「場所の文脈」というのはアート作品にとっても非常に重要ですね。瀬戸内国際芸術祭にあわせて、岡山と香川の間の小さな島で「豊島八百万ラボ」という施設と常設作品を作らせていただいたんですけど、その際には豊島には豊玉姫伝説という恋の神話をベースにした作品を製作しました。

赤く光るサンゴの遺伝子と、人が恋に落ちるオキシトシンというホルモンを蚕に組み込み、「運命の赤い糸をつむぐ蚕」と、それを祀る神社のような場所も作りました。

小川:あえて、豊島にテクノロジーを駆使したスプツニ子!さんの作品があることで新たな場所の文脈が生まれる。東京や銀座のような都市においても、そうしたことで新たな道が拓けることは十分あり得ますよね。

スプツニ子!:あえて異物を入れたいという気持ちがあるんです。豊島に行ったときに、自然と調和したアートが本当に美しくって、自然崇拝的な価値観の良さを感じたんですけど、あえて全然違ったテイストのものを入れてみようと。瀬戸内国際芸術祭総合プロデューサーの福武總一郎さんに、「魚は水槽の中で泳いでいるだけだと弱っていく。ガラス越しにピラニアを一匹入れておくと、見られていることで魚たちが活性化する。お前はピラニアになれ」って言われたことがあるんです。当たり前な流れにピラニアをぶち込むのはアーティストができることの一つかもしれないです。

小川:とはいえビジネス面で考えると、先端的すぎると成り立たないことが多いのも事実です。5年とか10年先まで見据えたモノはうまくいかない。2年先ぐらいがちょうどいいとされる。

日本は、技術力はすごく進んでるんだけど、その先端技術を異物として否定されてしまうところがあります。でも、スプツニ子!さんの作品のように、科学と対立しそうな神話や信仰がテクノロジーを受け入れているところには希望が感じられます。

スプツニ子!:そうなんですよ。八百万的に考えれば「遺伝子組み換えで生まれた「運命の赤い糸をつむぐ蚕」にも神様が宿ってるんじゃないの?」ということですね。東京でいえば神田明神がそのあたりすごくて、1300年の歴史がある古い神社なんだけど、IT情報安全祈願のお守りもあるんです。コンピュータクラッシュから守ってくれるの。気になって神社の人に聞いたら、神社は昔からその時代の社会と寄り添って進化していくものだから、と。交通安全祈願だって、よく考えたら自動車が走るようになったのはここ100年程度のことですからね。「宇宙旅行が一般化したら宇宙旅行安全祈願のお守りも出すんじゃないでしょうか」とも言われました(笑)。

東京にはピラニアが必要だ!

report_thumb3 小川:ピラニアのような存在が、東京というか日本に少ないのかもしれません。ソニーパークプロジェクトにしても、今までの延長ではなく、スプツニ子!さんをはじめとした方たちでいろんなアイデアや次のプランを乱暴でもいいからばらまき続ける必要がある。イノベーションはこれまでとは関係ないところから出てくるんじゃないですかね。

スプツニ子!:銀座って美しく規則正しく設計されてきた街ですけど、ソニーパークはそこに不測の事態を呼び寄せるものになるといいですよね。

小川:「不測性」ってすごくいいキーワードですね。規則性があることが今までの銀座のイメージだけど、これまでになかった違うエクスペリエンスがこれからの銀座に出てくるともっと面白い街になっていくと思う。2020年には東京五輪が控えています。いろんな開催地を転々とする中でたまたま東京に巡ってきただけなのか、それともこれが東京や銀座が変わっていくいい機会ととらえるのか。

スプツニ子!:4年後ってすぐなんだけど、普段はほとんどの人がそんな先まで見ていない。でも今は東京五輪があるから、みんなガンガン4年後やそれ以降のことを考えてますよね。だからこそチャンスといえるかもしれない。

小川:必要なのはピラニア。一回全部スクラップにしちゃう勢いでね。東京を破壊する映画『シン・ゴジラ』がヒットしているのは、潜在的にみんながそういうことにカタルシスを感じているから、という気がします。

スプツニ子!:自分の会社が壊される場面にグッときたという企業の方もいらっしゃいましたね。

小川:固定化された建物という考え方自体がもう古いのかもしれません。建物の外側はスケルトンにして、内部の壁は電子化して自由に区画を変えられるようなものとかね。建築家の隈研吾さんと対談したときに、そういうものも遠くない将来に実現できるとおっしゃってたんですよ。ソニービル解体後は「パーク」という概念があるんだから、何かそういうシームレスなものがいいのかも。

スプツニ子!:ディストピア的な考え方にとられるかもしれないけど、豊島の作品に登場したオキシトシンのように、化学物質や微生物を使って感情に影響を与えることで、ビジネス交渉がうまく進む部屋、プレゼンテーションに向いた部屋、なんていう建築空間のあり方があってもいいですよね。デートで美味しいご飯をおごってもらったら、「この人いいかも!?」って気分になることだってあるじゃないですか。微生物に幸せに感情操作される未来があってもいいんじゃないかな。

小川:臭いものにフタをするのは人間の悲しい性だけど、現在の常識や思考の積み重ねとは違う、突拍子もないところから考えていくことでのブレイクスルーを、この場所から仕掛けていけるといいですよね。ただビルを作り直すだけじゃなくてね。

スプツニ子!:まさにピラニア的なマインドが生まれる場所として、ですね。

TALK SESSION #07

開催日時
10月15日(土) 15:00〜16:30
開催場所
8F「コミュニケーションゾーン OPUS(オーパス)」

PROFILE

スプツニ子
スプツニ子!
テクノロジーによって変化していく人間の在り方や社会を反映させた映像、音楽、写真、パフォーマンス作品を制作。 主な参加展覧会に、「うさぎスマッシュ」(東京都現代美術館、2013)「Talk to Me」(ニューヨーク近代美術館(MoMA) 2011)など。2013年よりマサチューセッツ工科大学(MIT) メディアラボ 助教に就任し Design Fiction 研究室 を創設。VOGUE JAPAN ウーマン・オブ・ザ・イヤー2013受賞。2014年日経ビジネス「日本の主役100人」選出。同年FORBES JAPAN 「未来を創る日本の女性10人」選出。2011年伊Rolling Stone誌「今後10年に最も影響を与えるデザイナー20人」選出。同年米Advertising Age誌「世界のクリエイター50人」選出。2016年第11回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本特別賞」受賞。2016年4月~NHK「スーパープレゼンテーション」のMCを務める。著書「はみだす力」(宝島社)。
株式会社 ボン イマージュ所属 http://www.image-tokyo.co.jp/
小川和也
小川和也
慶應義塾大学法学部卒業。アントレプレナーとして先端的デジタルマーケティングを基軸としたベンチャービジネスの立ち上げと経営を国内外で行う一方で、フューチャリストとしてテクノロジーに多角的な考察を重ねて未来のあり方を提言している。これまでに、東京藝術大学非常勤講師、西武文理大学特命教授も務め、講演、メディア出演多数。主な著書に、人間とデジタルの未来を説いた『デジタルは人間を奪うのか』(講談社現代新書)、日本で初めて同タイトルの概念をテーマとした著書 『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンク クリエイティブ)など。月刊ソトコト『テクノロジーは、人間をどこへつれていくのか』、講談社現代ビジネス『小川和也のデジタルドリブン』、日本経済新聞カレッジカフェ『デジタル社会の光と影』、朝日新聞社WEBRONZAで連載執筆中。